メーカー直販とは?用語の解説からD2Cとの違いまで詳しく解説
近年は仲介業者を利用せず、メーカーが直接ユーザーに販売する「メーカー直販」のビジネスモデルが人気を集めています。とくにここ数年はD2Cという新たなメーカー直販モデルが注目を集めるなど、直販型のビジネスモデルは今後もますます増えていきそうです。
一方で、「なぜメーカー直販が人気なの?」「近年増えている理由は?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。とくにメーカー直販とD2Cの違いについては、多くの方が知りたいポイントです。
そこで今回はメーカー直販の用語の解説やメリット・デメリット、D2Cとの違いについて解説します。
メーカー直販とは?
メーカー直販とは、メーカーが問屋や小売業者を介さずに自社で商品の製造から販売までを手がけるビジネスモデルです。メーカーが「直接」ユーザーに向けて「販売」することから、メーカー直販と呼ばれています。
そもそもこれまでの小売販売では、メーカーが商品を製造してから卸売業社や小売業社を介してユーザーに販売するのが一般的でした。しかしこの手法では仲介コストや流通コストを上乗せする必要があり、販売価格を高くしたり、利益率を削ったりする必要があります。
そこで注目されたのがメーカー直販です。メーカーが自社で直接ユーザーに販売する仕組みを採用すれば、中間コストを削り、利益率を高めることができます。メーカーだけでなく販売価格を抑えることでユーザーにもメリットを還元できるため、注目のビジネスモデルとして人気を集めています。
デジタルツールの普及でメーカー直販のハードルが下がった
メーカー直販そのものは古くから採用されてきたビジネスモデルですが、なぜ近年脚光を浴びているのでしょうか。背景にあるのはデジタルツールの普及です。
デジタル技術が急速に進歩したことで、スマホをはじめSNSやアプリ、クラウドプラットフォームなどさまざまなデジタルツールが身近なものとなりました。この恩恵を受けているのはユーザーだけでなく事業者も同じで、かつては仲介業者に委託しなければならなかった業務を、自社でも担えるようになりました。とくにECサイトは世界中どこからでも商品を販売でき、メーカーにとっては既存のビジネスモデルを大きく転換することができます。
このように、デジタルツールが普及したことでメーカー直販を採用するハードルが下がったため、メーカー直販のビジネスモデルがあらためて見直される流れが生まれたといえます。
メーカー直販とD2Cの違いは?
さて、ここ数年ECビジネスのトレンドとして注目されているのが、D2C(Direct to Consumer)です。D2Cとはメーカーが商品の開発・製造から販売にいたるまでを自社で担うビジネスモデルです。販売は実店舗ではなくECを軸におこないます。
これだけ聞くとD2Cは「メーカー直販をECでおこなうビジネスモデル」と感じてしまいますが、実はメーカー直販とD2Cには大きな違いがあります。キーワードとなるのが、マーケティングの違いです。
メーカー直販とD2Cはマーケティングの方法や目的に違いがある
メーカー直販のマーケティングでは、商品の購入を目的にしています。いかに自社の商品を購入してもらえるかに視点が置かれ、新規ユーザーの獲得が大きな目標です。そのため施策でもWeb広告やDMなど直接的な方法が採用されます。
一方のD2Cでは、商品の購入で終わりではなく、継続的な関係性を築くことに視点が置かれています。具体的にはLTV(顧客生涯価値)や継続率が指標として用いられ、購入後も商品やブランドのファンで居続けてもらうことを目的とし、SNSやコンテンツ配信などで顧客との関係性を築いていきます。いわゆるファンマーケティングの考え方が強く、サイトのビジョンやストーリー性を訴求し、付加価値を提供するのがD2Cの特徴です。
D2Cのビジネスモデルを、「メーカー直販のデジタル化」と捉えている方も多いですが、それは大きな間違いです。両者の違いを知るなら、マーケティングの方法や目的に注目してみましょう。
メーカー直販のメリットとデメリット
ここまでメーカー直販のビジネスモデルやD2Cとの違いについて解説してきましたが、最後にメーカー直販のメリットとデメリットについて見ていきましょう。
メリット│利益率のアップやユーザーとの関係性向上につながる
- 利益率が高まる
- ユーザーと直接的な関係性を築ける
- データを自社で収集できる
メーカー直販の最大のメリットは利益率が高まることでしょう。問屋や小売業者を通さず直接販売をおこなうため、仲介コストや流通コストを削ることができます。結果として利益率がアップし、自社の経営にプラスに作用します。
またメーカー直販ではユーザーと直接やり取りをするため、接客やアフターサービスなどで関係性を構築しやすい点もメリットです。代理店が販売を請け負うと、自社のビジョンやコンセプトが伝わりづらいといった課題がありましたが、直接販売を行うことで想いや世界観をしっかりと訴求できます。
またこれまで仲介業者で止まっていたデータを自社で蓄積できるため、業務改善やマーケティング施策への反映が、スピーディーかつ最適化できる点もメリットです。
デメリット│立ち上げのハードルの高さやオペレーションの負担が大きい
- 立ち上げのハードルが高い
- オペレーションの負担が大きい
- 集客を自社で担う必要がある。
メーカー直販のデメリットとして立ち上げのハードルが高い点が挙げられるでしょう。これまで仲介業者に委託していた業務を自社で担うとなると、それだけ準備する材料も増えてきます。これは立ち上げ後のオペレーションの負担が大きくなるという点でもデメリットで、専門的なノウハウを持った人員の確保や、業務効率を改善するツールの導入など負担を少しでも軽減する体制づくりが求められます。
また、これまで小売店や代理店が担っていた集客を自社でおこなう点もデメリットの一つです。とくに集客ノウハウに乏しい場合は大きな負担となるため、こちらも事前に準備をしっかり整えておく必要があります。
まとめ
今回はメーカー直販とは何か?について解説しました。
メーカー直販とは、メーカーが問屋や小売業者を介さずに自社で商品の製造から販売までを手がけるビジネスモデルです。仲介業者を省くことで利益率のアップやユーザーとの関係性強化を図ることができ、デジタルツールの普及も追い風となって近年あらためて注目を集めています。
こうした流れのなかで、あらたにD2Cというメーカー直販のビジネスモデルが生まれています。D2Cでは既存のメーカー直販と違い「販売」だけをマーケティングの目的とせず、ユーザーとの関係づくりやファン化を図るなど、「販売後」の継続的な関係性を重視します。また世界観やストーリー性といった情緒的な価値を重視するため、SNSやコンテンツ配信がマーケティングの軸です。
D2Cは「メーカー直販のデジタル版」といったイメージで捉えられがちですが、両者のビジネスモデルの特徴には違いがあることをしっかり覚えておきましょう。
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