顧客目線で考えよう。定期購入で問題が起きる前に知るべき対策・法律を紹介
定期購入ビジネスは健康食品や化粧品を販売する多くのD2C企業が採用している販売手法です。近年、顧客とのトラブルが増加しており、各企業がサイトの見直しをしていますが、顧客目線でわかりづらく、トラブルが起きてしまうことも。定期購入で起きやすい問題や罰則に加えて、トラブルが起きないために知っておきたい法律について解説します。
目次
定期購入で起きやすい問題
多くの定期購入ビジネスで起きている問題は企業と顧客の間の認識違いによって起きており、問題視されています。まずは、消費者庁でも話題になっている問題の概要を紹介します。
お試し購入のつもりが定期購入をしていた
多くの定期購入ビジネスを行う企業は、新規獲得のために初回購入価格を割引して「お試し価格」で販売しています。
この初回のみお試し価格に、かつ定期申し込みを行うことを前提とした販売形式は、顧客目線で見ると「初回のお試しのみ購入」という認識になってしまっていることも。そして知らない間に定期購入をしてしまった、というトラブルが増えています。
2回目の購入金額を把握せずに購入していた
先述で解説した初回購入のみの割引からの定期契約という販売手法を用いたことによるトラブルだけではなく、初回から2回目購入の販売価格の変化を把握せずに購入してしまうトラブルも増えています。
初回のみ割引価格で販売し、2回目から通常価格で販売する手法は違法ではありません。
しかし、2回目の購入価格を小さい文字で記載する、顧客に伝わりづらいデザインで表記してしまうと認識の齟齬が起きてしまうことがあるため、注意が必要です。
定期購入の解約ができない
多くの定期購入ビジネスは「いつでも解約可能」「解約は次回発送日の◯日前であれば受付」という規約を設けていますが、定期購入の解約を抑止するためにコールセンターを繋がりにくくしたり、執拗に引き止める企業も少なくありません。
定期購入の解約は企業にとって大きな損失になりますが、真摯に解約対応を行わない企業が増加していることは、近年の通販業界で問題視されています。
定期購入の問題が大きくなると受ける罰則
定期購入ビジネスの契約内容や価格の認識齟齬からくるトラブルが大きくなると、企業は以下のような罰則を受けることがあります。
3年以下の懲役または300万円以下の罰金
2021年3月21日に定期販売ビジネスに関する法改正が決定され、個人の場合は3年以下の懲役または300万円以下の罰金が課せられることが決まりました。また、法人の場合は1億円以下の罰金が課せられることも。
企業が気を配っていても顧客とのトラブルが相次ぎ、消費者庁への報告が増えた時に懲罰が課せられる可能性もあります。顧客目線でビジネスを行うことがより重要視された事案です。
業務停止命令が下ることも
先述で解説したようなお試し価格から定期購入による引き上げからくるトラブルや、顧客の誤認を起こさせる販売設計などを行っていると、業務停止命令が下ることもあります。
2021年7月8日にも、化粧品の定期購入ビジネスを行っていた企業が消費者が誤認しやすいサイト表記にして「初回購入から定期縛りを設けた販売」を行った結果、3ヶ月間の業務停止命令が下された事案が起きました。
その他、解約時に表示する電話番号に架電しても自動音声案内となり、担当者と直接話すことはできずに解約できない設計にした企業なども業務の一部停止命令が下っています。
また、消費者のWebサイトには日本全国で業務停止命令が下った事案を掲載しています。適宜事案を確認し、企業で対策を考えると良いでしょう。
定期購入で問題が起きる前に見直したいこと
定期購入ビジネスはトラブルが起きやすい事業ですが、さまざまな法律や規約に基づいて顧客目線でサイト設計や広告配信を行えば顧客に価値を与えられます。
ECサイトの最終確認画面
ECサイトで顧客側が商品を購入時に確認する画面を分かりやすくすることは大切ですが、特定商取引法により以下の内容を記載することが義務づけられています。
- 分量(数量・回数・期間など)
- 販売価格・対価
- 支払時期および支払方法
- 商品を発送する時期
- 申込期間の内容
- 定期申し込みのキャンセル・解約に関する内容
分量や価格は定期購入ビジネスの場合、1回目の価格の量と2回目移行の価格と量を表などにして記載する必要があります。
また、商品を発送する時期や支払い時期も毎月何日かを記載してください。これらの内容を顧客目線で見た時に分かりやすく記載することを心がけましょう。
商品ページや広告の訴求内容
販売する商品をより良く見せることや、広告配信を行うことは販促において大切なことですが、顧客の目線から見て「商品の効果と訴求内容に乖離や齟齬がないか」を確認する必要もあります。
価格や効果を訴える時は景品表示法や薬機法に違反していないか、専門機関や社内のリーガルチェックを行いましょう。
解約ページへの遷移・コールセンターの対応
近年、サービスの解約のページを分かりにくくしたり、解約をしつこく引き止めたりする設計をしているWebコンテンツやECサイトが増えています。これらの設計はユーザーを意図的に騙す「ダークパターン」と言われており、日本でも問題視されているのです。
また、コールセンターが繋がらない、電話で執拗に定期解約を引き止める動きも近年では問題視されています。解約ページの遷移をなるべく分かりやすくすること、またコールセンターの対応の見直しなども行いましょう。
人員リソースを割くのが難しい場合はチャットボットなどの導入を行うのもおすすめです。
定期購入で問題が起きる前に学びたい法律
定期購入ビジネスを顧客目線で行うためには、マーケティングユーザー目線のデザインだけではなく、商品販売に関連した法律を学ぶことも大切です。
以下で紹介する3つの法律を社内で学び、事業に役立てましょう。
特定商取引法
特定商取引法は消費者庁のもと制定された、悪質な勧誘行為や事業者の悪意からくる違法から顧客を守るための法律です。
支払いの内容や期間、販売業者の情報、商品の返品に関する内容の管理やクーリングオフ制度について取り締まっています。ECサイトを用いたビジネスを行う上で欠かせない法律です。
景品表示法
景品表示法は消費者庁のもと制定された、商品ページや広告での誤認や訴求内容、価格などの表示を決めている法律です。顧客がサービスや商品を自主的かつ合理的に選ぶ環境を守るために作られています。
化粧品や洋服の成分や素材の表示の仕方や広告のキャッチコピー、機能性食品の広告や販売方法を正しく行う上で欠かせない法律です。
健康食品・化粧品関係の業者は薬機法も必須
サプリメントなどの健康食品に該当するものや化粧品などを販売する場合、薬機法を学ぶことも必要です。
薬機法(薬事法)は厚生労働省のもと制定された、健康食品や医薬品、化粧品の安全性・品質を守るためにある法律です。
健康食品や化粧品の訴求内容や成分の説明、広告文を作成するにあたって「使用したが皮膚トラブルが起きた」「訴求内容効果がなかった」という齟齬を防ぐ役割も担っています。
商品サイトや広告文に記載する内容を見直して過剰な訴求を行っていないか確認したり、顧客目線で安全に使える商品であることを認識する内容かを確認するためにも欠かせない法律です。
定期購入ビジネスは顧客目線で真摯に行うこと
今回は定期購入ビジネスを行っている企業や導入を検討する方に向けて、実際に起きている問題や顧客とのトラブルが起きないために社内で学ぶべき情報や法律をお伝えしました。
近年、消費者庁などの取締りもより強化されており、多くの定期購入ビジネスを行う各社がWebサイトや広告の記載内容を見直しています。
支援実績を持つマーケティング会社や専門機関などの知見や資料などを参考にしながら分かりやすく、訴求内容がより良く伝わる顧客目線の定期購入ビジネスを行ってください。
EC通販に精通したプロがお答えいたします。