日本の「サブスク」はなぜ上手くいかないのか?
多様なサービスを定額料金で利用できる「サブスク(サブスクリプション)」。近年日本でもブームとなっていますが、人気を集めるのは海外発のサービスが多く、国内企業の成功事例はまだ多くありません。
なぜ日本ではサブスクが上手くいかないのでしょうか?今回は、日本企業のサブスクが伸び悩む理由について見ていくことにしましょう。
日本企業のサブスクが上手くいかない3つの理由
動画配信の「Netflix」や音楽配信の「Spotify」、マイクロソフトの「Office 365」やアドビの「Adobe Creative Cloud」など、ユーザーの人気を集めるサブスクサービスの多くは海外発のものが大半を占めています。
国内企業のサブスクサービスはまだまだ発展途上で、苦戦を強いられている状況です。では、なぜ日本ではサブスク型のビジネスモデルが上手くいっていないのでしょうか?
1.既存のビジネスモデルからの脱却が遅れている
日本企業のビジネスは、製造業を軸とした構造が主流です。そのため、製造→流通→小売というビジネス形態が一般的で、この既存のビジネスモデルからの脱却が遅れている点が苦戦を強いられている理由に挙げられます。
自社で開発から販売までを行うDtoCモデルもまだまだ発展途上といえ、海外のスピーディーなモデルチェンジに追い付けていないのが現状でしょう。
2.日本人の保守的な心理も影響
一方で、ユーザー側の心理にもサブスクが伸び悩む理由が隠されています。日本人は新しいサービスに対して慎重な国民性で、利便性の高さからすぐにサービスを乗り換えるより、まず周囲の反応を確認する傾向にあります。
もちろん、この国民性に良し悪しがある訳ではありませんが、サブスクという新しいビジネスモデルに対して「状況を伺っている」という点は事実と言えるでしょう。
3.サービスに対する事業者側のノウハウが不足
サービスを導入する事業者側が、サブスクに関してのノウハウに乏しいという事例も見受けられます。
海外企業の攻勢や、トレンド化の流れから自社でもサブスクを導入したものの、従来までのサービスとの差別化を図れず、中途半端な状況に陥る…というケースも頻出するなど、サブスクを利用するメリットを上手く訴求できていない点も伸び悩みの理由でです。
日本でサブスクを成功させるヒント
では、日本でサブスクを成功させるにはどうすればいいのでしょうか?ヒントとなるのは、「モノからコトへ」です。
「モノからコト」へを生かす
近年ビジネスの世界では、「モノからコトへ」というフレーズがよく聞かれます。これは、商品(モノ)主体のビジネスモデルから、体験(コト)主体のモデルへの転換を意味する言葉です。
若者の車離れや家離れに代表されるように、消費者のニーズがモノを購入することよりも、体験することにシフトしています。サブスクは、「音楽を聞く」「映像を見る」「サービスを利用する」といったように、コトとの相性が良いビジネスです。
このニーズの変化を念頭に置いて、自社のサブスクも体験ベースのサービスを提供することが重要となってきます。
「モノとコト」の垣根を取り払う
とはいえ、モノを専門に扱う企業にとっては、体験ベースへのシフトは難易度の高いミッションです。こうした企業が目指すべきは、「モノとコト」の垣根を取り払うことにあります。
例えば、近年注目を集めているスマートウォッチ。時計という商品に、ヘルスケアやツールの管理といった体験をミックスした製品の1つです。
例えば、時計の製造を手掛ける企業が、スマートウォッチから得られた情報をもとに、パーソナルトレーナーからのアドバイスを受けることができるサービスをサブスクで提供すれば、モノのコトの垣根を取り払った新しいビジネスを生み出すことが可能です。
上記の例は、すでにサービスとしてリリースされていますが、アイデア次第でサブスクを導入できるヒントとなるのではないでしょうか。
「サブスク」という概念を広めていく
最後に、日本の企業でサブスクを広めていくヒントして、意外な盲点をご紹介しておきましょう。それは、「サブスク」という概念自体が浸透してないということです。
筆者は仕事柄、サブスクという言葉を日常でも使用するのですが、「サブスクってなに?」という反応によく出くわします。
そこで、サービスの概要や使い放題という説明をすると、「あ、○○のことね!」と具体的なサービス名を返してくれることがあります。
つまり、ユーザーはサブスクのサービスは利用しているものの、「サブスク」という言葉や概念には思った以上に疎いということが分かります。このギャップを意識して、サブスクの概要や利便性を丁寧に広めていくことは、重要なミッションと言えるでしょう。
また、あえて「使い放題」「定額サービス」といった日本人に馴染みやすい言葉をチョイスする手法もアイデアの1つです。
まとめ
今回は、日本企業のサブスクが伸び悩む理由についてご紹介しました。
日本では、製造が主体のビジネスモデルが主流となっているため、サブスク型のモデルへの移行がまだまだ遅れています。また、ユーザーはもちろん、事業者側もサブスクに対しての認知度が低く、サービスのメリットを生かしきれていない現状が見て取れます。
サブスクの普及を目指すなら「モノからコトへ」に代表される消費者ニーズの変化をより意識したアプローチが重要です。
商品(コト)と体験(コト)をミックスしたサービスを生み出すなど、既存の概念に縛られないアイデアを提供できれば、日本でのサブスクを成功させる突破口となるでしょう。