ECサイトの利益率目安はどのぐらい?考え方や利益を上げる方法を解説
ECサイトの運営において、利益率は重要な指標のひとつです。
売上額や販売数も大切な指標ですが、優先順位はECサイトの将来性や事業を継続させるための基盤である利益への考え方によって変わります。適切な利益率を把握したうえで運営を進めていけば、より利益を確保しやすくなり、事業の健全性や成長性も変わっていくでしょう。
本記事では、ECサイトにおける利益率の目安や利益率を設定する際の考え方、利益率を上げる方法などについて解説します。
目次
ECサイトにおける利益率の目安
ECサイトの利益率は、約20%を目安にするとよいでしょう。この数値は、ECサイトの経営を含め、通販ビジネスにおいて用いられる「3・3・4の法則」「1・5・4の法則」に基づいたものです。
3・3・4の法則
まず「3・3・4の法則」は、商品原価率を30%、販売促進費を30%、その他の経費と利益を合わせて4割に収めるのを推奨する法則です。この法則では、商品の仕入れコストと販売促進費用を合わせて売上の60%以内に抑え、残りの40%でその他の運営コストを賄いつつ利益を確保することを目指します。この場合、営業利益率は通常、20%程度が一般的です。
1・5・4の法則
もうひとつの「1・5・4の法則」は、商品原価を10%、販売促進費を50%、その他の経費と利益を40%に設定する法則です。その他の経費と利益を合わせて40%とする点は「3・3・4の法則」と同じですが、販売促進により多くのコストをかけている点が特徴です。この法則は特に化粧品や健康食品など、高い販売促進費用を必要とする特定の商品を販売する際に適用されます。
上記の法則をベースとしつつ、ECサイトで取り扱う製品や求める利益率に応じて利益率を設定しましょう。
利益率の計算方法
利益率は、売上からコストを差し引いた後の利益が売上に占める割合を示します。これにより、ECサイトの収益性を評価可能です。利益率は、大きく粗利益率と純利益率の2点に分けられます。
粗利益率
粗利益率は、売上総利益が売上高に占める割合を示します。売上総利益は、売上から直接的な販売コスト(商品の仕入れ価格など)を差し引いたものです。粗利益率は、商品単位での収益性を測定するために用います。
計算式は以下のとおりです。
粗利益率(%)=売上総利益÷売上高×100
純利益率
純利益率は、純利益が売上高に占める割合を示します。純利益は、売上高から販売コスト、運営費用、税金、利息など、すべての経費を差し引いた後の利益です。純利益率は、ECサイトの収益性を測定するために用います。
計算式は以下のとおりです。
純利益率(%)=純利益÷売上高×100
たとえば、ECサイトの売上高が1,000万円、販売コストが600万円、その他の運営費用が200万円だった場合、粗利益率と純利益率は以下のように計算できます。
売上総利益 | 1,000万円(売上高)-600万円(販売コスト)=400万円 |
粗利益率 | 400万円(売上総利益)÷1000万円(売上高)=40% |
純利益 | 1000万円(売上高)-600万円(販売コスト)-200万円(その他運営費)=200万円 |
純利益率 | 200万円(純利益)÷1,000万円(売上高)=20% |
物販の一般的な利益率
ECサイトに限らず、物販ビジネスにおける利益率は15%〜20%前後であると言われていますが、取り扱う商品の種類や市場の状況、販売方法などによって細かい利益率は変動します。
商品や時代の流れ、消費者のニーズに柔軟に対応しつつ、持続的にECサイトを運営できる利益率を設定しましょう。
利益率を確認すべき理由
ECサイト運営において、利益率は重要な指標です。利益を確保できているかを把握することで、経営状況や効率的に運営できているかどうかなどを確認できます。
ここからは、利益率を確認すべき理由を解説します。
経営状況を把握するため
ECサイトの運営時に利益率を確認することで経営状況を正確に把握できます。
売上の数字だけでは、実際の経営状況をすべて理解することはできません。例えば、売上が高いことが理由で利益が伸びている場合は、以下の表のように売上が落ちると赤字に転落する危険性があります。
売上が低くても利益が伸びていれば、利益が伸びている要因となっている商品の販促に注力することで、さらなる利益率の向上が見込めるでしょう。
また、利益率が低い商品については、価格戦略の見直しや、仕入れコストの削減、あるいはラインナップからの削除を検討することが適切かもしれません。
上記のように、利益率を定期的にチェックすることで、必要に応じて経営戦略を調整することが可能になります。利益率が下がってきたら、状況に応じて適切な対応を行うことで、持続的にECサイトを運営できるでしょう。
効率的な運営が行われているかを確認するため
利益率を確認すべき理由は、効率的な運営が行われているかを確認するためです。
利益率が極端に低いと、運営におけるどこかのコストが過剰にかかっている、価格設定が間違っているなどの恐れがあります。たとえば、商品の仕入れコストが高すぎる、配送コストが予想以上にかかっている、あるいはマーケティング活動が十分なROI(投資収益率)をもたらしていないなど、さまざまな要因が考えられるでしょう。
利益率の分析を通じて、これらの問題点を特定し、コスト削減や効率改善のための戦略を立てられるようになります。
利益率設定の考え方
利益率を設定する場合は、販売価格を先に決める方法と利益率を先に決める方法があります。各手法の特徴を理解し、ECサイトの状況に応じて決め方を選択しましょう。
販売価格を先に決める
利益率設定のために販売価格を先に決める方法を活用するときは市場調査や競合分析を通じて、商品の販売価格をまず決定します。価格が決まった後、商品の仕入れ代や運営費を考慮して、目標とする利益率を算出します。
販売価格を先に決めると、最初に価格を設定することから競争力のある価格設定ができるというメリットが生じます。
一方、市場の価格競争に巻き込まれやすく、利益率が低くなることに注意しなければなりません。また、商品に関わるコストが増加した場合、利益率を維持することが難しくなる恐れもあります。
利益率を先に決める
ECサイトの利益率を伸ばすためには、販売価格ではなく、利益率を先に決めることも有効な方法です。利益率は、事業が持続するために必要な最低限の利益や、事業拡大に必要な投資額を考慮して決めます。そのうえで、目標利益率を達成するために必要な販売価格や基準を満たした商品を決定します。
利益率を先に決めると、事業の持続可能性と成長性を確保しつつ、価格設定ができるというメリットが生じます。また、事前に利益率を定めることで、事業の目標に合わせた経営判断が可能になります。
しかし、市場の価格感覚と乖離してしまう可能性があり、設定した価格が高すぎると販売機会を逃すリスクがあることも視野に入れてください。
ECサイト運営で発生する費用
ECサイトの運営時は、さまざまな費用が発生します。また、コストは運営において必ず発生する傾向にあります。利益率を高める前段として各項目の詳細を理解し、社内で削減できる経費がどれかを知りましょう。
ここでは、以下の3点からECサイト運営で発生する費用について解説します。
商品の開発や制作などに関わる費用
商品の開発や制作などに関わる費用は、以下のとおりです。
- 仕入れ代
- 商品登録費
それぞれの概要を解説します。
仕入れ代
仕入れ代は、ECサイト運営において最も重要な費用のひとつです。仕入れ代は、商品の種類や購入量、購入先の価格設定によって大きく変動します。利益率を向上させるためには、仕入れ代をできるだけ低く抑えるよう意識しましょう。
仕入れ代を抑える際には、仕入れ価格の割引交渉や、供給元を比較検討して競争力のある価格を提供するサプライヤーを見つけることが有効です。また、中間業者を通さずに生産者やメーカーから直接仕入れることで、仕入れコストをさらに削減できる可能性も生まれます。
商品登録費
商品登録費は、ECサイトに商品を掲載し、販売準備を整える際に発生する費用です。商品登録費は、選択した販売プラットフォームによって異なり、商品それぞれに対して発生する場合もあれば、登録できる商品数に応じて料金が設定される場合もあります。
また、商品登録時は、商品ページを作成するための写真撮影や説明文の作成なども必要です。撮影や執筆にカメラマンやライターを雇うと、依頼分の費用や撮影スタジオ代が発生することも視野に入れてください。
Webサイトの制作や運営に必要な費用
Webサイトの制作や運営に必要な費用は、以下のとおりです。
- ドメイン代・サーバー代
- 各種システムの利用料
- SSLサーバ証明書代
- 決済代行サービスに支払う手数料
それぞれの概要を解説します。
ドメイン代・サーバー代
ドメイン代とサーバー代は、ECサイト運営において必要となる費用です。
ドメイン代は、取得するドメインの種類やプロバイダーによって異なりますが、一般的には年間数千円から数万円程度かかります。また、サーバー代はサーバーのスペックや提供される機能によって価格が変動します。
ドメイン代とサーバー代はECサイトを運営するうえで必ずかかる費用のため、コストパフォーマンスが高いドメインとサーバーを選択することが大切です。規模が拡大するにつれて、より高性能なサーバーを契約する必要が出てくる可能性も頭に入れておきましょう。
各種システムの利用料
ECサイト運営には、商品の展示から注文処理、顧客管理にいたるまで、多様な業務を支える各種システムが必要です。代表的なシステムとして、在庫管理システムや顧客管理(CRM)システム、決済処理サービスなどが挙げられます。
在庫管理システム | 商品の在庫状況をリアルタイムで把握し、効率的な在庫管理を支援するツール |
顧客管理システム | 顧客データの収集と分析、マーケティング活動の最適化を行うためのシステム |
決済処理サービス | クレジットカード決済や電子マネー、銀行振込など、多様な支払い方法を顧客に提供するためのシステム |
適切なシステムの導入は、ECサイトの運営効率を大幅に向上させることができる一方で、コストの増加にも繋がります。ECサイトの規模や成長見込みに応じて、最適なシステムを選びましょう。
SSLサーバ証明書代
SSLサーバ証明書は、ECサイト運営において重要なセキュリティ対策のひとつです。この証明書を導入することで、サイトとユーザー間のデータ通信が暗号化され、情報の盗聴や改ざんを防げます。
SSLサーバ証明書の費用は、提供するセキュリティレベルや証明書の種類によって異なりますが、一般的なドメイン認証(DV)証明書は、年間数千円程度で提供されることが多い傾向です。
また、無料のSSL証明書を提供するサービスもあります。無料のSSL証明書は、更新頻度が高い、サポートが限定的であるなどのデメリットもあるため、状況に応じて適切なSSL証明書を選択しましょう。
決済代行サービスに支払う手数料
決済代行サービスに支払う手数料は、ECサイト運営において必要な経費のひとつです。
この手数料は、ECサイト上での商品購入時に顧客が利用するクレジットカード決済や電子マネー決済、銀行振込など、さまざまな支払い方法に対応するために必要です。
決済代行サービスを導入すると、ユーザーに幅広い決済手段を提供できるようになることにくわえて、新たな支払い手段の情報を入力する手間を省くことができます。
決済代行サービスの手数料は、サービス提供者や選択する決済方法によって異なりますが、一般的には売上の3%前後と言われています。決済代行サービスの手数料は、ECサイトの商品価格設定や利益率に直接影響を与えるため、サービス選択時には手数料の詳細を慎重に検討しましょう。
その他ECサイト運営に必要な費用
その他ECサイト運営に必要な費用は、以下のとおりです。
- 配送費・梱包費
- 広告費・マーケティング費
それぞれ解説します。
配送費・梱包費
配送費と梱包費は、ECサイト運営において商品を顧客に届けるための経費です。
配送費は商品を顧客の元へ輸送するために支払われる費用であり、重量、サイズ、配送地域、配送速度などによって変動します。また、梱包費は商品を安全に配送するために必要な梱包材料の費用や梱包業務にかかる費用です。
広告費・マーケティング費
広告費とマーケティング費は、ECサイトの認知度を高め、新規顧客を獲得するために必要な経費です。広告費とマーケティング費をかけることで、市場での競争力を強められます。
広告費は、オンライン広告やSNS広告、検索エンジン広告(SEM)、バナー広告など、さまざまな形式の広告に支払われる費用です。
マーケティング費は、これらの広告にくわえ、コンテンツマーケティングやメールマーケティング、イベントやキャンペーンの実施など、顧客との関係構築やブランド価値の向上を目的とした活動に関連する費用となっています。
ECサイトの利益率を上げる方法は?
ECサイトの利益率を上げるためには、さまざまなアプローチが考えられます。ECサイトの状況に応じて有効なアプローチを選び、取り入れるようにしましょう。
主な利益率を上げる方法は、以下のとおりです。
- 経費を見直す
- システムを見直す
- 販売方法を見直す
経費を見直してECサイトの利益率を上げる方法
経費を見直してECサイトの利益率を上げる方法は、以下のとおりです。
- 広告費を見直す
- 配送料を見直す
- 利益率の高い商品を選定する
- 仕入れ先を見直す
それぞれ解説します。
広告費を見直す
ECサイトの利益率を上げるためには、広告費の見直しが効果的です。広告はECサイトの販促に有効な集客手段のひとつですが、無計画に広告費をかけても、成果が得られないこともあります。そのため、広告費が適切に使われているのかを定期的に見直しましょう。
まず、現在の広告戦略を分析してください。どの広告が最もコンバージョンを生んでいるのか、反対にコストばかりかかって効果が薄い広告はないかどうかを確認します。そのうえで、ターゲットとする顧客層をより正確に定義し直し、広告の精度を高めましょう。顧客データを分析して、最も反応がよい顧客層を特定し、そのグループに焦点を当てた広告キャンペーンを展開するのがおすすめです。
配送料を見直す
配送料の見直しは、ECサイトの利益率を上げるために有効な手段といわれています。ECサイト運営においては、売上が多くなればなるほど配送料もかさむため、配送業者との交渉や倉庫場所を見直して、少しでも配送料を削減するよう意識しましょう。
たとえば、大量配送の際には配送業者に割引の交渉をすることで、コスト削減を実現できることがあります。また、複数の配送業者の料金やサービス内容を比較検討し、定期的に業者を見直すことも重要です。
利益率の高い商品を選定する
利益率の高い商品を選定することは、ECサイトの利益アップにおいて重要な取り組みです。
利益率の高い商品を選定する際は、市場と競合の分析を行いましょう。どの商品の需要が高いか、競合他社の価格設定はどうなっているかなどをリサーチしてください。
市場の動向は常に変化しているため、利益率の高い商品も都度変わっていきます。そのため、市場のトレンドや顧客のニーズ、競合の動きを定期的に分析し、商品ラインナップを定期的に見直し、必要に応じて調整する取り組みを行うことが大切です。
仕入れ先を見直す
仕入れ先の見直しは、ECサイトの利益率を上げるために有効です。同じ商品であっても、安く仕入れられればその分だけ利益率はアップします。
仕入れ先を見直す際は、価格だけではなく、納期や供給の安定性なども考慮しましょう。低価格で仕入れられる取引先を見つけても、納期の遅れが発生すると顧客満足度を損ない、顧客離れが起きる可能性があります。
また、メーカーや生産者から直接商品を仕入れられれば、仲介業者を通すよりも低いコストで商品を確保できます。この方法を取る際には、十分な量の商品を確実に供給できるかどうか、長期的な関係を構築できるかどうかを検討しましょう。
システムを見直して利益率を上げる方法
システムを見直してECサイトの利益率を上げる方法は、以下のとおりです。
- 自社に合うカートシステム・決済代行サービスを選定する
- 受発注システムを導入する
それぞれの概要を解説します。
自社に合うカートシステム・決済代行サービスを選定する
ECサイトの利益率を上げるためには、自社に最適なカートシステムと決済代行サービスの選定が重要です。
カートシステム・決済代行サービスはECサイトにとっては必要不可欠ですが、サービス利用の際に決済手数料や販売手数料がかかります。システムによって利率が異なるため、複数のシステムを比較検討しましょう。
ただし、手数料率だけでシステムを選定するのではなく、操作性や機能性を考慮したうえで、自社に合うシステムを選ぶのがおすすめです。
受発注システムを導入する
受発注システムを導入すると、ECサイトの運営効率を大幅に向上させられます。結果として、利益率を上げる効果が期待できるでしょう。
受発注システムは、顧客からの注文を自動的に処理し、在庫管理や発送準備、配送までの作業をまとめて管理するシステムです。システムを導入することで、手作業によるミスや作業時間が少なくなり、ほかの業務に時間を割けるようになります。
受発注システムの導入には初期費用が必要ですが、長期的には作業効率アップ、コスト削減、顧客満足度の向上による売上増加などによって、大きな利益をもたらす可能性が高いでしょう。
販売方法を工夫してECサイトの利益率を上げる方法
販売方法を工夫してECサイトの利益率を上げる方法は、以下のとおりです。
- 単価を上げる
- セット販売をする
それぞれ解説します。
単価を上げる
ECサイトの運営で利益率を向上させる有効な方法は、商品の単価を上げることです。単価を上げれば直接的な利益の増加に繋がり、同じ販売数でもより高い利益を得られるでしょう。
価格設定を見直すためには、競合分析や市場価値の評価が必要です。市場における同様の商品やサービスとの比較を行い、商品の独自性や付加価値がどれだけ高いかを検証します。そのうえで、商品の価格を設定し直すことが重要です。
セット販売をする
ECサイトの利益率を向上させる効果的な方法のひとつとして、セット販売を導入している企業も多くあります。セット販売は、利益率が異なる複数の商品をひとつのパッケージとして販売することで、顧客にとっての購入メリットを提供しつつ、単体での販売よりも高い利益を実現する戦略です。
セット販売は、単品で購入するよりも価格がお得になるよう設定することが重要です。結果として顧客満足度が高まり、リピート購入や口コミによる新規顧客獲得につながる可能性があるでしょう。
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ECサイトの利益率を向上させる取り組みは、ビジネスを成功させるために欠かせないものです。まずは現状を把握したうえで、利益率を高めるために必要な施策を打ちましょう。
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