顧客をブランド作りに巻き込む「ユーザー参加型」の商品開発とは?

近年マーケティング戦略の一環として、ユーザー参加型の商品開発が注目を集めています。
ブランドを構築する上で重要なセクションとなる商品開発の段階からユーザーに参加してもらうことで、ブランドへの愛着を育み、新規顧客の獲得やファン化に繋げるのが狙いです。
今回は、ユーザー参加型の商品開発の強みや、具体的なブランド事例について解説します。
ユーザー参加型の商品開発で顧客のファン化を狙う
これまでブランドの商品開発は、企業だけで完結するのが一般的でした。しかし、スマホの普及やSNSの拡大によりユーザーとの距離感が近くなったことで、ユーザー参加型の商品開発が注目を集めるようになりました。
例えば、
- 商品のパッケージデザインをSNS上のアンケートで募る
- 商品に求める機能やニーズをライブ配信で募集する
- クラウドファンディングを通じて資金提供を呼びかける
など、テクノロジーやサービスを活用してユーザーと一緒にブランドや商品開発に取り組む動きが加速しています。
目的は顧客のファン化。商品開発の初期段階から顧客が深く関わることで、商品やブランドへ対しての愛着を育むことができます。結果として商品発売後もファンとしてブランドを応援(購入)してくれる傾向が強くなり、中長期的な関係性を構築できます。
ECでの新規顧客獲得が難しくなった
では、なぜこうしたユーザー参加型の商品開発が注目を集めているのでしょうか。
大きな理由に、ECでの新規顧客の難易度が年々高まっている点が挙げられます。EC市場は毎年右肩上がりで成長を続けていますが、それにつれて、事業者間の競争はますます過熱化しています。
新規顧客の獲得競争も激しさを増しており、以前に比べマーケティングの成果が見えづらい状態が続いていました。
そこで事業者は、顕在顧客になる前段階である、潜在顧客や見込み顧客の開拓に注目。そのアプローチの1つが、ユーザー参加型の商品開発です。新規顧客を獲得するのではなく、企業で「育てていく」という視点を取り入れることで、これまで開拓できなかったユーザー層を掘り起こし、顧客の獲得に繋げていきます。
また、ユーザーがファン化すればLTVを高めることができ、売上の拡大に繋げられるのもメリットの1つです。
ユーザー参加型の商品開発のメリット
ユーザー参加型の商品開発には多くのメリットがあります。ここからは、以下のメリットについてそれぞれ説明します。
- 顧客満足度の向上
- ブランドロイヤリティの強化
- 市場ニーズへの迅速な対応
- マーケティング効果
- コスト削減
顧客満足度の向上
ユーザー参加型の商品開発では、顧客の声が直接反映されるため、顧客は自分の意見が尊重されていると感じ、満足度が高まります。結果、購入後の満足度もアップし、ネガティブなフィードバックが減少します。
製品に関する不満や改善点を事前に収集して改善することができるため、顧客の期待を超える製品を提供することができます。
ブランドロイヤリティの強化
顧客が自分のアイデアが商品化される体験を通じて、ブランドに対する信頼感や親近感が高まり、他のブランドに流れることなく、継続的にそのブランドを支持するきっかけとなり、リピーター・ファンの育成につながります。
市場ニーズへの迅速な対応
顧客からの直接的なフィードバックを活用することで、リアルタイムに市場のニーズやトレンドに対応することができます。これにより、競合他社よりも迅速に市場に適応し、シェアを拡大することが可能になります。
また、新興市場やニッチ市場においても、顧客の特定のニーズを満たす製品を提供することで、競争優位性を確立することができます。
さらに、多様な顧客からの意見やアイデアを収集することで、従来の発想にとらわれない新しいアイデアが生まれやすくなります。
マーケティング効果
顧客が商品開発に参加することで、自然な口コミやプロモーション効果が期待できます。顧客は自分が関与した商品を積極的に宣伝し、周囲に紹介するため、企業はマーケティングコストを削減しつつ、高い宣伝効果を得ることができます。
さらに、顧客にも商品開発に関与する過程をSNSやブログでシェアしてもらうことで、ブランドの認知度向上にもつながります。
コスト削減
商品開発の初期段階で顧客のフィードバックを取り入れることで、無駄な開発コストやリソースを削減することができます。市場投入後に大幅な改良が必要となるリスクを軽減し、効率的な商品開発が可能になります。
これにより、開発サイクルが短縮され、より迅速に市場に投入することができます。
商品開発の手順
ユーザー参加型の商品開発の一般的な手順をご紹介します。
1.コンセプトの設定とプロジェクトの計画
開発する商品の目標や解決したい問題、ターゲットユーザーを明確にし商品コンセプトを作成します。
プロジェクトに必要なリソース(時間、人員、予算)を決定し、ユーザー調査をするためのコミュニケーションツールやプラットフォームを選定します。
2.ユーザー調査の実施
ターゲットユーザーにインタビューを行い、ニーズや期待を直接ヒアリングします。
同時に数値でデータを把握するために、オンラインアンケートも使って、より多くのユーザーから意見を収集しましょう。
より具体的な商品イメージを固めるためには、ユーザーを招待しアイデア共有のイベントの開催や、オンラインプラットフォームやSNSを使って、ユーザーからアイデアを募ってみるのも良いでしょう。
実際にユーザーの声を集める中で、当初のコンセプトやターゲットユーザーが変わってくることもあります。情報を整理しながら慎重に進めましょう。
3.アイデアの選定と試作品の開発
集めたアイデアをもとに、商品イメージを固め、試作品の開発を進めます。
試作品の開発に必要な技術や専門性のある工場を選定しましょう。最終的に製品化することを考慮した場合のコストと品質のバランス、また、配送を考えた場合の工場の立地なども重要です。
4.モニターテストの実施とフィードバック回収
ターゲットユーザーに実際に試作品を試用してもらい、具体的なフィードバックを収集しましょう。
フィードバックをもとに、試作品を改良し、再度モニターテストを行います。
5.製品化とマーケティング
モニターテストを通じて得られたフィードバックを反映し、品質をチェックしながら、必要な調整を加え、最終的な製品を完成させます。
同時に発売に向けたマーケティング戦略を策定します。開発に参加したユーザーには事前に開発の告知をし、宣伝活動を促すようなプロモーションを行うことで、発売前から口コミ効果を狙うことができます。
6.継続的なフィードバック回収と改善
発売後もユーザーのフィードバックを収集し、商品の使用感や問題点を確認しましょう。
定期的なアップデートは顧客満足度の向上やブランドロイヤルティの強化を継続するために重要です。
ユーザー参加型の商品開発をしているECサイト事例3選
では、ここからはユーザー参加型の商品開発やブランド運営を行っているECサイトの事例をご紹介します。
1.ALL YOURS(オールユアーズ)
ALL YOURS(オールユアーズ)は、D2Cモデルで事業を展開しているアパレルブランドです。
オールユアーズはCAMPFIREにて24か月連続でのクラウドファンディングを展開。累計5,700万円超の支援金を集め、アパレルカテゴリにおいて国内最高額の支援金額を達成しました。
同社の木村昌史氏はインタビューにて、
ブランドとして一番気をつけているのは、なるべく自分たちでブランドを定義しないということです。お客さんが入る余地を意識的に残しています。
と語り、一方通行の関係ではなく、双方向の関係性を構築することを目指しています。
クラウドファンディングはそのアプローチの一つであり、商品へのフィードバックや開発段階でも積極的にユーザーが参加することで「共犯関係(木村氏談)」を築き、ブランドの価値を高め、ストーリー性を持たせることに成功しました。
インタビュー引用先:顧客ではなく共犯者。服を介したコミュニティを形成する、SNS時代のアパレル進化論|木村昌史(ALL YOURS)
2.LEGO(レゴ)
デンマークに本社を置く玩具メーカーLEGO(レゴ)は「LEGO Ideas」というプラットフォームを通じて、ファンから新しいセットのアイデアを募集しています。
一定の支持を得たアイデアは、実際に製品化され、販売されることがあります。これにより、LEGOは常に新しい市場ニーズに対応し、顧客の期待を超える製品を提供しています。
3.PHOEBE BEAUTY UP(フィービー ビューティーアップ)
若年層を中心に絶大な支持を集めるコスメブランドPHOEBE BEAUTY UP(フィービー ビューティーアップ)。同社はユーザー参加型の商品開発で大きな成功をあげた事例の1つです。
フィービービューティーアップは2019年に誕生したD2Cコスメブランドですが、その出発点となったのが、美容メディア・DINETTE(ディネット)です。ディネットは2017年からインスタグラムを軸に、美容やコスメに関する動画を発信。豊富なコンテンツや若年層に刺さる「映える」サイト作りが支持され、人気メディアへと成長しました。
実はフィービー ビューティーアップの商品は、ディネットを利用するユーザーの声をもとに商品開発が行われています。自社メディアでメインとなるターゲットのニーズを的確に掴みつつ、商品開発に参加するという「体験」を提供することで、フィービービューティーアップは瞬く間に人気ブランドへと成長しました。
まとめ
ユーザー参加型の商品開発は、商品やブランドへ対しての愛着を育むことができるだけでなく、顧客との中長期的な関係性を構築することができます。
SNSをはじめ多くのデジタルツールが気軽に使える現代では、ユーザーと繋がりやすい環境を作りやすいため、企業としても積極的に活用する価値は大きいでしょう。
また、年々ECサイトの競争が過熱化する中、新規顧客の獲得へのハードルは高くなっています。こうした状況の中で、ユーザー参加型の商品開発は今後ますます注目を集めていくでしょう。
EC通販に精通したプロがお答えいたします。