食品D2Cの市場調査!市場規模や今後の動向を予測
国内でもD2Cブランドが台頭する中、近年注目を集めているのが、食品D2Cです。
これまで食品系のECは鮮度や配送の難しさから市場規模の拡大が遅れていましたが、コロナ禍による巣ごもり消費の増加で一気に市場が活性化。自社ですべてのオペレーションを完結できる食品D2Cも次々と登場するなど、大きな賑わいをみせています。
今回は、食品系D2Cの最新の市場規模や今後の動向について解説します。
食品D2Cの市場規模は340億円【2020年度】
矢野経済研究所が発表した『食品D2Cサービス市場に関する調査』によると、2020年度の食品D2Cの市場規模は340億円となっています。これは、前年比58.1%の大幅増で、食品D2C市場の活況をうかがわせる数字です。
D2Cとは、商品の企画・製造から販売、カスタマーサポートにいたるまですべてのオペレーションを自社で完結するビジネスモデルです。近年のECではトレンド的なモデルとして広がりを見せていますが、今回の調査結果を見ると食品分野においてもD2Cブームが訪れていることが分かります。
ビジネスモデルの強みが食品D2Cの活況を後押し
そもそもD2Cのビジネスモデルは、自社ですべてのオペレーションを完結するため無駄な仲介コストや業務が発生せず、スピード感のある事業運営を実現することができます。
また、デジタルテクノロジーを積極的に活用する点もD2Cの特徴で、事業を加速度的に成長させることができるのも強みの一つです。食品D2Cの市場規模の推移を見てみると、2018年度から前年比で52.7%→90.3%→58.1%と急激な拡大を続けており、ビジネスモデルの強みが食品D2Cの活況を後押したといえるでしょう。
食品ECの2020年度の市場規模は初の4兆円を突破
さて、食品D2Cの活況はビジネスモデルの恩恵だけが理由ではありません。コロナ禍による巣ごもり消費の増加が、食品系のEC全体の市場規模を押し上げた点も理由として挙げられます。
矢野経済研究所が発表した『2021年版 食品通販市場の展望』の調査結果を見ると、食品ECの2020年度の市場規模は4兆3057億円。これは前年比13.1%の増加で、調査開始から初めて4兆円を超える結果となりました。
背景としてコロナ禍による外食自粛やリモートワークの増加により、ECを利用して食品を購入する機会が大幅に増えた点が挙げられます。また、同調査では第1回目の緊急事態宣言が発出された2020年4~6月に長期保存可能な米や飲料、乾麺、レトルト食品、インスタント食品などのまとめ買いが増加してことも指摘しており、コロナ禍が食品EC全体の売上を底上げしたと読み解くことができます。
食品D2Cの活況は、こうした食品EC全体の活況も大きく影響したと見ることができるでしょう。
食品D2Cの今後の動向
では、今後の食品D2Cの動向についての予測を、3つのポイントから見ていきましょう。
1.スタートアップ系のD2Cの台頭
1つ目は、スタートアップ系のD2Cの台頭です。
もともとD2Cブランドはスタートアップ系の企業が多い傾向にありましたが、今後は以前にも増してスタートアップ企業の参入が増えてくることが予想されます。
市場が好調である点はもちろん、コロナ禍で普及した宅配サービスは今後も需要の増加が見込まれ、新規参入する食品D2Cにとっては追い風となるでしょう。
2.大手企業の参入
2つ目は、大手企業のD2Cブランドへの参入です。
コロナ禍の影響で大きな痛手を受けたのが実店舗を持つ飲食店です。こうした状況で食品ECへ進出する大手企業が増加していますが、今後は競合他社との差別化や利益率の向上を目指しD2Cブランドを立ち上げる動きが加速するでしょう。
これまで大手企業はD2Cブランドの立ち上げに対して様子見の状況が続いていましたが、食品D2Cがこれだけ市場規模を伸ばす中、積極的な戦略にシフトする動きが予想されます。企業のDX化が叫ばれる時代の流れからしても、大手企業の参入が食品D2Cのトレンドとなっても不思議はないでしょう。
3.お取り寄せや限定販売に商機
食品ECではこれまで、既存の店舗で販売している商品を通販で提供したり、パッケージ化したりするといった流れが一般的でした。
しかしコロナ禍によるEC需要の増加を受けて、通販でしか手に入らないお取り寄せ商品や限定商品へのニーズが高まっています。
食品D2Cの代表格といえば、限定販売のチーズケーキで大ヒットを飛ばしたMr. CHEESECAKEが有名ですが、今後は同ブランドのように限定感や付加価値を提供できる食品D2Cへの注目がいっそう高まっていくでしょう。
まとめ
食品D2Cは、コロナ禍による巣ごもり消費の追い風も受けて、2020年度の市場規模は340億円を記録しました。これは前年比58.1%の大幅アップで、市場の活況をうかがませます。
また、食品ECで市場全体でも2020年度は初の4兆円を突破するなど、「オンラインで食品を購入する」という文化がコロナ禍で一気に広まったと考察できます。
今後は獲得したユーザーをいかに繋ぎ止めていくのかが、事業を成長させる鍵となります。コロナ禍の状況に左右されないために、大手企業では実店舗を運営しつつデリバリーやECを併用するなど、リスクを分散することで事業拡大を見据える動きが見られます。
また、D2CにのようにECに特化したブランド運営に一本化する方法も効果的で、どのような新しい動きが見られるのか、食品業界の今後の動向に注目が集まります。
EC通販に精通したプロがお答えいたします。