D2Cブランドが運営する独自メディアの事例を紹介
国内でもすっかり定着してきたD2Cのビジネスモデルですが、ブランドを運営する際に重要な役割を果たしているのが独自メディアです。
自社で運営するオウンドメディアやSNS、動画チャンネルなどが該当し、ブランドはメディアを通じて自社の世界観を発信。新規ユーザーの獲得や、ストーリー性のあるブランド運営に繋げることで、集客やブランディングに活用しています。
今回は、D2Cブランドがメディアを運営するメリットや、独自メディアの事例についてご紹介します。
D2Cはブランドを「メディア化」することで世界観を発信している
D2C(Direct to Consumer)は、自社で商品の開発から販売、マーケティングにいたるまで、全ての工程を担うビジネスモデルです。自由度の高いサイト運営とスピード感ある事業展開が特徴で、仲介コストの削減や積極的なDX化に取り組むことで、利益率の大きいビジネスモデルを実現することができます。
国内でもすっかりおなじみとなったD2Cですが、キーワードとなるのが「世界観」です。世界観とは、ブランドのビジョンやコンセプトのことで、D2Cでは商品の質だけでなく、その背景にある世界観を積極的に発信し、ストーリー性のある事業展開を実行していきます。
そこで大きな役割を果たすのが、独自メディアです。独自メディアには、オウンドメディアや公式SNS、動画チャンネルなどが挙げられますが、ブランドはこうしたメディアを積極的に活用することで世界観を発信し、集客やブランディングに繋げています。
「D2Cはメディア企業である」と表現する事業者も多いですが、これは世界観をいかにユーザーに届け、共感してもらえるかがビジネスモデルの重要な鍵となるため。D2Cにとって自社ブランドの「メディア化」は事業の成功を左右する大切なポイントと言えるでしょう。
独自メディアを運営するD2Cブランドの事例3選
ここからは、D2Cブランドの中で独自メディアを運営している事例を3つご紹介します。
1.PHOEBE BEAUTY UP(フィービービューティーアップ)
PHOEBE BEAUTY UP(フィービービューティーアップ)は、若年層を中心に熱烈な支持を集めるD2Cコスメブランドです。
ブランドの出発点は、スキンケアやコスメに関する動画を発信している独自メディア「DINETTE(ディネット)」。2017年から運営する同メディアでは、instagramを中心にスキンケアやメイクに関するHow to情報を発信し、多くのユーザーを獲得。2019年に起ち上げたフィービービューティーアップの商品は、ディネットに集まったユーザーの声を元に商品開発が進められ、ブランドとしてリリースされました。
自社メディアですでに獲得していたファンが、そのままブランドのコアユーザーとなることで、フィービービューティーアップは一気に人気ブランドへと成長。ファンがSNS上で積極的にブランドに関する口コミや評価を発信したことで、新規ユーザーの獲得に成功しました。
2020年5月には3億円の資金調達を達成するなど、国内のコスメ系D2Cブランドとして急成長を続けています。
2.SAKE HUNDRED(サケ・ハンドレッド)
「日本酒の未来をつくる」のビジョンのもと、日本酒のD2C「SAKE HUNDRED(サケ・ハンドレッド)」を運営する株式会社Clear。
Clearでは、2014年から日本酒に関するWebメディア「SAKETIMES」の運営を開始。2016年からは海外向けのサイト「SAKETIMES International」をオープンし、日本酒に関する多彩な情報を発信してきました。
2018年にはSAKE HUNDREDの前身となるD2Cブランド「SAKE100」を起ち上げ、2020年に現在のブランド名にリブランドを実施しています。
SAKETIMESは2020年5月に月間PVが100万PVを突破。日本酒の文化を広く世の中に発信した意義は大きく、サケ・ハンドレッドのブランド価値向上や集客にも大きく貢献しています。
3.Glossier(グロッシアー)
最後にご紹介するのが、Glossier(グロッシアー)です。
グロッシアーは、アメリカ発のコスメ系D2Cブランド。2018年には未上場で評価額が10億ドル(約1,100億円)以上のベンチャー企業を意味する「ユニコーン企業」の仲間入りをはたし、世界的なD2Cブランドとして絶大な支持を集めています。
同ブランドの創業時の話として有名なのが、ブログから起ち上げったブランドであるというエピソードです。代表を務めるエミリー・ワイスは、月間1,000万PVを記録するコスメブログの運営者でした。エミリーはブログを閲覧してくれるユーザーの声から、消費者にとって「価値のある」ブランドが求められていると感じ、自らD2Cブランドを起ち上げ。
ブランドの起ち上げ後も自身のブログや公式YouTubeは継続して発信を続け、ユーザーとの信頼関係を強固にしていきました。グロッシアーのYouTubeでは、自社ブランドだけでなく他社のブランドも積極的に紹介しています。これは、マーケティング目的でただ自身のブランドを宣伝するのではなく、あくまでもユーザーにとって最高のコスメを選んで欲しいという信念に基づいてのことです。
こうした真摯で透明性のある運営こそ、グロッシアーが支持を集める理由であり、ユニコーン企業へと成長を果たした要因といえるでしょう。
エミリーはインタビューで「グロッシアーはコンテンツ企業」と発言しています。今後も積極的にコンテンツを発信し、ユーザーとの信頼関係を構築していくことで、ブランドの拡大を目指す意思表示といえるでしょう。
まとめ
今回はD2Cブランドが運営する独自メディアの事例についてご紹介しました。
今回ご紹介した事例では、ブランドの創業前に独自メディアの運営をスタートしています。メディアを通じてしっかりとファンを獲得してからブランドを開始したことで、ある程度顧客を持った状態で事業をスタートすることができます。これは、これから事業を展開する事業者にとって、大きなヒントとなる事例でしょう。
では、メディアを展開してからでなければD2Cブランドは成功しないかというと、そうではありません。ブランド起ち上げと同時にSNSやYouTube、自社ブログなどをスタートし、多くのファンを獲得している事例も多く見られます。
前者と後者に共通している点を挙げるなら、独自メディアの運営は「継続」が重要なポイントだということ。この点はどのD2Cブランドにも共通している部分で、メディア運営における成功の秘訣といえるかもしれません。