ECサイトにおける景品表示法(景表法)の違反事例を解説
景品表示法(景表法)とは商品やサービスを販売する際に、品質や内容・価格等の表示に関して設けられた法律のことです。ECサイトでの販売に関しても景品表示法は適用され、商品ページや広告で違反があれば故意であるかないかに関わらず、法的に罰せられます。
今回は景品表示法の概要や具体的にどのような内容が違反にあたるのか、事例を交えて解説します。ECサイトを運営する事業者の方は、この機会に内容を確認しておきましょう。
景品表示法とは?
景品表示法(景表法)とは、正式には「不当景品類及び不当表示防止法」という法律を指します。同法は一般の消費者を保護する目的で設けられており、大きく次の2つの内容について定められています。
- 不当表示の禁止(商品・サービスの品質・内容・価格等の表示に関する規制など)
- 景品類の制限及び禁止(景品類の最高額の制限など)
分かりやすく言えば、不当な広告や消費者が誤認するような表示を禁止するために設けられた法律です。例えば「商品の内容が実際よりもよく見えるような広告」「実際には得られない効果・効能の表示」「ユーザーが誤認するような紛らわしい価格表記」などが挙げられます。
ECサイトも景品表示法の規制に該当する
景品表示法はテレビ・ウェブのCM、雑誌・新聞広告、ポスターや看板、チラシといった媒体に加え、ECサイトでの広告や表示内容も規制の対象となっています。
注意したいのが、景品表示法の罰則は故意であるか・ないかに問わず罰則が適用されること。つまり「知らなかった」という言い訳は通用せず、ECサイトを運営する事業者なら誰もが同法に関する知識を持っておく必要があります。
法律違反が確認された場合、まず消費者庁から措置命令(表示内容を改める命令)が発せられます。しかしこの措置命令にも応じなかった場合は、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金、あるいはその両方が科される可能性があります。また、違反当事者に加えて事業者にも罰金が科される可能性があり、その額は3億円以下と定められています。
ECサイトでの景品表示法の違反事例
さて景品表示法の「不当表示の禁止」では、大きく次の3つの項目が禁止事項にあたります。
- 優良誤認表示(5条1号)
- 有利誤認表示(5条2号)
- 商品・サービスの取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがあると認められ内閣総理大臣が指定する表示(5条3号)
ECサイトでは具体的にどのようなケースが違反にあたるのか、過去の事例を参考に見ていきましょう。
※ご紹介する事例は「景品表示法における違反事例集(消費者庁)」を参考にしています。
1.優良誤認表示の事例
優良誤認とは、商品・サービスの品質、規格その他の内容について、実際の商品よりも著しく優良であるかのように誤認させる表示のことです。
平成22年6月の事例では、婦人靴を販売するECサイトが「ムートン」、「素材 羊革」等と記載していたにも関わらず、実際はアクリル繊維が使用されていたとして措置命令を受けました。
また、平成25年12月の事例では、健康食品を販売していたECサイトが「寝ている間に勝手にダイエット!?」、「寝る前に飲むだけで努力なし!?」といった表示を広告で記載し、措置命令を受けました。この事例では、あたかも商品を摂取するだけで適切な運動をせずに痩せられるような誤認を与えた点が違反に該当。実際にはそのような効果や効能は得られず、措置命令の対象となりました。
このように優良誤認では、素材の表示内容が違うといった明らかな誤認だけでなく、消費者がイメージすることで誤解を与えるような表示内容についても罰則の対象となります。
2.有利誤認表示の事例
有利誤認とは、商品・サービスの価格やその他取引条件についての不当表示について定められています。
平成23年2月の事例では、おせちを販売するECサイトで「通常価格 21,000 円 割引率 50%
OFF 割引額 10,500 円」といった表示を掲載しました。しかし実際には21,000円という通常価格は存在せず、架空の金額を使っていたとして有利誤認として措置命令を受けました。
また、平成27年3月の事例では通信教育を提供するサービスで「資格取得!応援キャンペーン」「全講座1万円割引」「期間限定」といった表示をしていたものの、実際にはほとんどの期間において、同様の割引キャンペーンを実施していました。こちらはECサイトの事例ではないですが、キャンペーンやイベントを実施する機会が多いEC事業者は注意が必要な事例です。
3.その他の表示事例
優良誤認や有利誤認以外にも、「商品・サービスの取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがあると認められ内閣総理大臣が指定する表示(その他の表示)」に該当する場合は、景品表示法に違反したとして罰則の対象となります。
具体的には、
- 無果汁の清涼飲料水等についての表示
- 商品の原産国に関する不当な表示
- 消費者信用の融資費用に関する不当な表示
- 不動産のおとり広告に関する表示
- おとり広告に関する表示
- 有料老人ホームに関する不当な表示
などが該当します。
平成23年3月の事例では、アパレルを販売するECサイトが商品の原産国をアメリカと記載していました。実際には対象商品の原産国はアメリカ以外の国であり、「商品の原産国に関する不当な表示」に該当するとして措置命令を受けました。
ECではさまざまな商材を販売することから、自社の広告や商品の記載内容が上記の項目に該当しないか、事前に確認しておきましょう。
まとめ
今回はECサイトにおける景品表示法の違反事例についてご紹介しました。
景品表示法は不当な広告や消費者が誤認するような表示を禁止するために設けられた法律で、ECサイトの広告やページの記載内容も罰則の対象となっています。また、罰則は故意であるか・ないかに関わらず適用されるため、事業者が自分達の表示内容が違反に該当しないか、きちんとチェックする体制を整えておく必要があります。
こうした違反行為は社会的信用を落とし、事業運営に大きなダメージを負います。しっかりと法律の内容を確認し、消費者の信頼を失わないサイト運営を意識しましょう。
EC通販に精通したプロがお答えいたします。