クーリング・オフの依頼がきたら?ネット通販担当者が知るべき対策・対応方法を解説
近年、顧客との商品情報の誤認やご操作による返品トラブルや、クーリング・オフの希望者が増加しています。
返品が起きないためには真摯な対応やサイト内の工夫が求められますが、企業内でどのような対策をとればいいかわからずにいる方も多いでしょう。
今回は、クーリング・オフの概要や返品要望が来た時の対応方法に加えて、クーリング・オフが起きないために企業ができることを解説します。
クーリング・オフとは
クーリング・オフとは、売り手と買い手の間での商品返却や返金を行うための制度です。
訪問販売や勧誘販売などで買い手が「商品の訴求内容と実物の相違」を感じたり「勧誘を断りきれず契約してしまった」といった不本意の契約を交わしたりしたとき、一定の条件に該当していれば無条件で契約の撤回や解除を行えます。
クーリング・オフの期間
通常、実店舗などで商品を購入した場合、購入してから日数が経つと返品できない場合がありますが、クーリング・オフの対象である商材は設けられた期間内であれば返品・返金を行うことができます。
・契約・購入から8日間
特定継続的役務提供、電話勧誘販売、訪問販売
例:キャッチセールス、展示販売、職場訪問販売、催眠商法(SF商法)
エステティックサロン、美容医療、結婚相談所(結婚相手紹介サービス)、
・契約・購入から20日間
業務提供誘引販売取引、連鎖販売取引
例:紹介ビジネス、インターネットなどを用いた内職商法 など
多くのクーリング・オフははがきや電話などで申請するため時間を要することがあります。
しかし、売り手が虚偽の内容を買い手に話し、執拗に引き止めたり脅したりする行為をしてクーリング・オフを行わなかった場合、期間が過ぎてもクーリング・オフを行うことができます。
ネット通販はクーリング・オフ対象外?
訪問販売や電話販売、展示販売などはクーリング・オフを適用できますが、ネット通販では使えるでしょうか?
実は、3,000円以下の商品や使用済みの商品やネット通販での取引、店舗での取引はクーリング・オフが対象外となっています。
しかし、ネット通販ではクーリング・オフがない代わりに返品に関する特約を定めて、内容をサイトや広告に表示する義務があります。
返品に関する特約は以下の基準に沿って顧客目線でわかりやすく表記してください。
- 文字サイズは読みやすい大きさで、行間・字間を十分にとる
- 「返品について」という事項を設けて、他の取引条件や規約と区別がつくようにすること
- 返品に係る送料負担、返品の可否、返品条件は明確に表示する
また、返品に関する特約は全ページに表示せず「ご利用ガイド」などの専用ページにまとめて、サイト内のヘッダーやフッターなどの共通表示部分に表記するのがおすすめです。
特約の記載がない場合、購入から8日以内であれば送料を買い手負担で返品することができます。
購入後のトラブルや執拗な返品を防ぐためにも、必ず広告やサイト内に返品特約を記載しましょう。
ネット通販でクーリング・オフ(返品)を求められた時の対応手順
法に基づいて商品を訴求・販売しても商品の返品を求められることがありますが、ネット通販を始める前や返品対応を行ったことない企業にとってどのように対応すれば迷うこともあるでしょう。
以下の手順に従って社内で返品マニュアルやサイトの作成や対応を行いましょう。
1.返品理由を聞く
はじめに、顧客から返品の要請がきたら返品理由を聞きます。
この時、返品理由は顧客都合、または売り手都合の場合の2パターンに分かれます。
・顧客都合の理由:誤って購入してしまった、商品が不要と感じた など
・売り手都合の理由:商品の破損、傷、不良品、購入したのと違う商品が届いた など
返品や交換の依頼がきたら謝罪を行い、商品が返品対象かどうかを確認したのち、返品対応を行います。
返品理由のヒアリングはサイトの専用フォーム内で行うとスムーズです。
記載を依頼する、もしくは該当する選択肢の中から返品理由を選べる方式で申請できるようにするなど、顧客が申請しやすいフォームづくりを心がけましょう。
2.交換の場合は在庫を確認する
顧客が商品を誤って購入してしまった時や不良品との交換を行う時は交換商品の内容と在庫の確認を行います。
商品が顧客都合で返品となった場合は必ず商品を返送後に対応してください。
返送された商品を確認して、使用の痕跡や傷跡や汚れがない場合は再販売を行い、再販売が難しい場合はリユース品として処分することも検討しましょう。
3.返品or交換商品の返送対応を行う
商品の返品が確定したら返送または交換対応を行います。
顧客にとって返品や交換の作業は難しく感じるものです。
顧客に返品や交換の対応をお願いすることが決まったら、返送先の住所を記載した着払いの伝票を送るのがおすすめです。
顧客が商品に伝票を貼り付けるだけで返送ができるように対応しましょう。
交換対応で新しい商品を届ける場合は、必ず顧客から商品が返品されてから行ってください。
商品の混同や顧客の認識違い、返品商品が届かないといったトラブルを防ぐことにもなります。
4.返金処理を行う
商品の返送・交換の処理を終えたら返金処理を行います。
クレジットカード払いの場合は、クレジット会社経由で商品の購入額と同額が請求書から引かれて相殺される形で返金処理が行われます。
返金の完了にかかる目安の日数も、必ずサイト内に明記しましょう。
通販サイトの管理画面内で、顧客情報と返品履歴などが紐付けされるシステムを選ぶとよりスムーズです。
ネット通販内でできるクーリング・オフ対策
クーリング・オフや返品を減らすためには商品開発や改善だけではなく、マーケティング戦略やネット通販サイトの改善を行うことも大切です。
ここからは、企業がすぐに行えるクーリング・オフ時のトラブルや対応を最小限に抑えるための対策をお伝えします。
特定商取引法にクーリング・オフの規約を明記する
ネット通販サイトには特定商取引法を記載することが義務づけられています。
また、サイトのページ内にクーリング・オフや返品に関する情報を明記すると、顧客に安心感を与えられることにくわえて、返品時の説明のリソースを削減できるのです。
ネット通販とともにエステや美容医療を行っている企業も、必ずクーリング・オフの規約を明記しましょう。
広告やLPの内容は顧客目線で分かりやすく明記する
広告やLPはさまざまな規約を守りながら作成を行う必要がありますが、規約の中には企業が自由に訴求をしづらく感じる内容もあります。
そのため、デザインを重視しすぎたり、訴求に限界を感じて記載するべき情報や規約を小さく明記して意図的に情報誤認を招いてしまう事例も少なくありません。
情報誤認からくるクーリング・オフやトラブルを防ぐためにも商品情報などは顧客目線で分かりやすく明記しましょう。
誤操作などが起きにくいサイト設計を心がける
ネット通販の中には操作間違いで購入をしてしまう顧客も少なくありません。
顧客都合の返品・交換対応であっても増えてしまうと社内リソースが足りなくなることも。
誤操作が起きないように顧客が操作しやすいサイト設計を心がけてください。
デザインやボタンの位置を見直したい時は、2パターンのページを制作して分析を行うABテストを実施するのもおすすめです。
クーリング・オフ要請がきたら真摯に対応する
社内のマニュアルやサイトに先述でお伝えした内容を反映させていても、クーリング・オフや返品の要請がくることはあります。
顧客から商品の返品や交換などの要請がきたら、むやみに引き止めず、真摯に対応しましょう。
真摯に対応することで企業のイメージアップに繋がることもあります。
顧客からのフィードバックを事業に活かす
ネット通販は顧客の顔が見えないからこそ、口コミなどが大切な情報材料になります。
クーリング・オフや返品・交換の意見はサイト設計や商品開発、広告などに活かして、事業の発展に活かすこともできます。
新規事業で情報材料がない場合は、ネット通販サイトの制作や運用支援会社のサポートを受けながら、サイト設計を行うのがおすすめです。
ネット通販のクーリング・オフは正しく真摯に対応を
今回はクーリング・オフや返品トラブルで悩む企業や、ネット通販サイトの立ち上げを検討している企業に向けて、クーリング・オフの概要やネット通販で返品・交換を求められた時の対応について紹介しました。
クーリング・オフや返品・交換は売上に直接影響するため全ての企業が避けたい事案ですが、返品数を減らすためにはサイト設計やマニュアルなどを徹底して真摯に対応する必要があります。
また、カートシステムを選ぶ時は、クーリング・オフなどに関する法律や、サイト内の記載事項のサポートに対応したサービスを選ぶことも大切です。
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