ダイエット・健康器具の需要はECでも高まっている?
新型コロナウイルスの感染拡大は、さまざまな業界に影響を与えました。その1つが、ダイエット・健康器具業界です。店舗型のフィットネスクラブが売上を大きく減らしている一方で、ECやオンラインサービスがかつてない活況を見せています。
今回は、健康器具業界の現状を解説しながら、今後のEC需要について考察します。
新型コロナの健康器具・フィットネス業界への影響は?
まずは、新型コロナウイルスの感染拡大による、健康器具・フィットネス業界への影響について見ていきましょう。
実店舗型のフィットネスクラブの売上高が大幅減
大手フィットネスクラブの2020年4~12月期の決算を見ると、各社とも前年度の同時期を大幅に下回る減収減益となりました。
各社の営業損益と前年比の割合は次の通りです。
- コナミスポーツ -83億円(44%減)
- ティップネス -46億円(47%減)
- ルネサンス -33億円(38%減)
- セントラルスポーツ 2億4000万円(37%減)
各社とも軒並み大幅な赤字を記録しており、セントラルスポーツも特別損失として31億円を計上しているため、実質29億円近い赤字となっています。
全国での緊急事態宣言が発令されたのは、2020年4月16日。それ以前からも自治体独自の宣言は発令されており、外出を伴うフィットネスクラブの利用率は大幅に減少しました。
また、フィットネスクラブでのクラスター発生が相次いだことも、大きな痛手となりました。店舗では綿密な感染対策を徹底しているものの、フィットネス器具やロッカーといった共有スペースが多く、感染が拡大しやすいというサービスそもそもの特徴が影響してしまいました。
EC・オンライン市場は売上アップ
一方で健康器具・ダイエット関連で大きく売上を伸ばしたのが、ECやオンライン市場です。
世界規模のECサイトを運営するeBayでは、新型コロナウイルスによるロックダウン時期のデータとして、健康器具・フィットネス関連が大幅に売上をアップさせたと発表しました。前年比で1,000%増という驚愕の数字を叩き出し、具体的にはダンベルの売上が1,980%増。ウェイトプレートが1,355%増など、記録的な売上となっています。
国内でもEC各社で健康器具の売上高が軒並み増加。また、ライブ配信やオンデマンド配信によるオンラインフィットネスサービスも高い売上を記録するなど、オンライン市場が大きな賑わいを見せました。
背景にあるのは外出自粛による運動不足。新型コロナの感染が拡大した時期は「巣ごもり消費」がトレンドとなりましたが、通勤や通学、日常的な運動が制限されたことで自宅で健康を維持するアイテムが注目を集めました。また、宣言の解除後もリモートワークの増加で在宅勤務が増加した点や、第2波・3波が広がったこともオンライン市場を後押ししました。
実店舗で苦戦したフィットネスクラブでもオンラインの活況に注目し、オンライン配信やアプリサービスをスタート。会員のつなぎ止めや新規獲得の切り札として期待を集めています。
今後も健康器具ECの活況は続く?
さて、ここまで新型コロナウイルスによる健康器具・ダイエット業界への影響について解説しました。大きなポイントは、
- 実店舗のフィットネスクラブが大幅減収
- EC・オンラインサービスが記録的な活況
の2つのいえます。
では、今後も健康器具・フィットネス関連のECは好調が続くのでしょうか?
バブル的な活況は縮小もオンラインへの「きっかけ」は商機になる
結論から述べると、一定の需要は続くもののバブル的な活況は縮小傾向になると予想されます。
現在のオンライン市場の好調は新型コロナウイルスによる感染が要因です。今後ワクチン接種等により感染が縮小すれば、実店舗の需要が回復すると見れらています。在宅での健康管理はスペースの問題もあることから、本格的なフィットネスを求めるユーザーは自然と実店舗へ足を向けるでしょう。また、フィットネス器具はある程度長期間の使用が見込めるため、買い換え需要が低い点も縮小が予想される理由です。
一方で、今回のECやオンラインサービスの利用がユーザーにとって「きっかけ」となる可能性は期待できます。これまでオフラインに限定されていたサービスが、オンラインでも利用できるという実体験を得たことで、オンラインへシフトするユーザーは一定数いるでしょう。また、O2OやOMOという仕組みを導入することで、両者を連動させたサービスを構築できればこの活況を次のステージへの昇華させることも可能です。
まとめ
今回は、ダイエット・健康器具について、新型コロナウイルスによる影響やECでの需要について解説しました。
感染拡大を受け実店舗を運営するフィットネスクラブは大幅な減収減益となり、現在も苦境が続いています。一方のECやオンライン市場は巣ごもり消費を追い風に記録的な売上を記録しました。今後は感染が減少するとともにバブル的な活況は縮小すると予想されますが、この時期にオンラインサービスを利用した新規顧客をリピート顧客へ繋げられれば、ECでの商機を見込むことができるでしょう。