サブスク型ビジネスの事業計画を立てる際のポイントとは?利益構造と重要指標についても解説
近年、サブスク型ビジネスの市場が成長しています。従来の買い切り型ではなく、低コストで手軽にサービスを活用できるサブスクを求めているユーザーが増えているためです。
そのため、今後新たに事業を始める際には、サブスクの導入可否は欠かせない検討事項となるでしょう。また、導入時は入念に事業計画を立てて取り組みを進める必要があります。
本記事では、サブスク型ビジネスの概要や事業計画を立てる際のポイントにくわえて、押さえるべき管理指標などについて解説します。
目次
サブスク(サブスクリプション)とは
サブスク(サブスクリプション)とは、顧客が定期的に料金を支払うことで、商品やサービスを継続的に利用できるビジネスモデルです。
一回きりの購入ではなく、継続的にサービスを提供することで企業側が収益を得る点が特徴として挙げられます。サブスクは、各種アプリや映画、音楽、飲食など業界を問わずさまざまな場所で活用されています。
サブスク型ビジネスの市場規模
近年、サブスク型ビジネスの市場はさまざまな業界に広がっています。
矢野経済研究所の調査によると、2022年度の国内のサブスクサービスの市場規模は約8,965億円、2023年には見込値で約9,430億円にも達していることがわかりました。今後もサブスク市場は成長を続け、2025年には約1兆118万円に達するとの予測がされています。
出典:サブスクリプションサービス市場に関する調査を実施(2023年)|株式会社矢野経済研究所
サブスク型ビジネスが注目される背景
サブスク型ビジネスが注目される背景には、いくつかの要因があります。
まず、顧客の動きが変わってきている点が大きな要因です。現代の顧客は、商品を所有することよりも使いやすさを重視する傾向にあります。特に若い世代が、より柔軟なライフスタイルを求める傾向にあり、そのニーズにサブスクがあてはまっています。
また、デジタル技術の進化もサブスク型ビジネスが浸透している要因です。技術の進化によって、企業は顧客の行動をリアルタイムで分析し、パーソナライズされたサービスを提供できるようになりました。これにより、従来以上に顧客満足度を高める施策が打てるようになっています。
サブスク型ビジネスの事業計画を立てる際に押さえるべき項目
サブスク型ビジネスの事業計画を立てる際に押さえるべき項目は、以下のとおりです。
- サブスク型ビジネスの収益・利益構造
- サブスク型ビジネスに関わる管理指標
それぞれ解説します。
サブスク型ビジネスの収益・利益構造
サブスク型ビジネスは、契約を結んだ顧客に対して定期的に商品やサービスを提供し続けることによって収益を得ます。具体的な収益・利益は「顧客数×顧客1人あたりの収益(利益)ー事業運営にあたって発生した費用」によって算出可能です。
サブスク型ビジネスでは、定期的な収入を確保しつつ、顧客をつなぎとめることで長期的な利益を生み出せます。どれだけ顧客と深い関係を構築し、サービスを利用し続けてもらうかが、ビジネスを成功させるポイントである点を押さえておいてください。
サブスク型ビジネスに関わる管理指標
サブスク型ビジネスを成功させるためには、ビジネスに関わる管理指標の理解と適切な運用が欠かせません。特に押さえておくべき管理指標は、以下のとおりです。
- LTV(顧客生涯価値)
- MRR(月次経常収益)
- LVR(リード速度率)
- CAC(顧客獲得単価)
- ARPU(顧客あたりの平均収益)
- CR(解約率)
それぞれ解説します。
LTV(顧客生涯価値)
LTV(Life Time Value)は、1人の顧客が自社にもたらす推定総収益の指標です。この指標は、顧客が製品やサービスを利用し続ける期間全体にわたって、その顧客から得られる収益の現在価値を算出することによって計算されます。
LTVを高める戦略は、顧客満足度をアップするためのキャンペーンの実施、アップセル・クロスセルの促進などがあります。また、この指標はマーケティングのROI(投資収益率)を評価する際や、CAC(顧客獲得単価)とのバランスを取るためにも用いられる点が特徴です。高いLTVを持つ顧客を特定すれば、より効果的な戦略を展開できます。
MRR(月次経常収益)
MRR(Monthly Recurring Revenue)は、サブスクを通して毎月定期的に得られる収益の総額を指します。この指標は、ビジネスの収益の安定性と予測可能性を評価するうえで重要な役割を果たし、企業の成長と健全性を計るバロメーターとなります。
MRRを分析する際には、以下の要素を考慮しましょう。
- 新規MRR:新しく獲得した顧客からの収益
- 拡張MRR:既存の顧客が追加購入を行い、増加した収益
- 解約MRR:顧客の解約やプランのグレードダウンによって減少した収益
それぞれのカテゴリーを分析すれば、収益の増減の原因を特定し、新たな戦略を立てる助けとなります。たとえば、解約MRRが高い場合は、顧客満足度を向上させるための施策が必要となるでしょう。
またMRRは、LTV(顧客生涯価値)やCAC(顧客獲得単価)など、他の指標と組み合わせて評価されることが多い傾向です。
LVR(リード速度率)
LVR(Lead Velocity Rate)は、企業が新たに獲得したリード(潜在顧客)の数が、どの程度の速度で増加しているかを示す指標です。LVRは、サブスクの収益成長を予測するために用いられます。
LVRが高ければ、市場でサブスクの需要が増加していることを示しています。逆に、LVRが低い場合は、市場の変化やマーケティング戦略がうまくいっていないなどの可能性を考慮しなければなりません。
LVRを活用すれば、マーケティングと営業戦略に対して、状況に応じた適切な調整を行えます。
CAC(顧客獲得単価)
CAC(Customer acquisition cost)は、新規顧客を獲得するために企業が費やすコストを表す指標です。具体的なコストとしては、広告費やプロモーション費用、人件費などが挙げられます。
CACは収益性を計るために重要な指標で、LTVがCACを上回っている状態が理想です。CACがLTVを上回っている場合は、サブスクが持続不可能である恐れがあります。一般的には、LTVがCACの3倍以上であることが望ましいです。
LTVがCACを上回っていれば、企業が新規顧客を獲得するために支払うコストを長期的に回収可能です。
ARPU(顧客あたりの平均収益)
ARPU(Average Revenue Per User)は、顧客1人あたりから得られる平均的な収益を示す指標です。この指標は、企業が顧客からどれだけ効率的に収益を得ているかを測定します。
ARPUは企業がどれだけ効果的に顧客を収益化しているかを示すため、価格決定や収益性の高い顧客セグメントの特定など、さまざまな戦略決定に役立ちます。
ARPUを向上させるためには、既存顧客に対するアップセルやクロスセルの提案などが有効です。さらに、市場調査や競合分析を通じて価格設定を見直すことも、ARPUを効果的に改善する手段です。
CR(解約率)
CR(Churn Rate:解約率)は、特定の期間内にサブスクを解約した顧客の割合を示す指標です。
CRが高いことは、顧客が商品・サービスに満足していない、あるいは競合他社の商品・サービスがより魅力的であることを表しています。解約率が低ければ、顧客満足度が高く、商品やサービスのクオリティが一定以上であることの証明となるでしょう。
解約率の管理は、収益の安定性と持続可能性を保証するうえで重要です。解約率を抑えることで、長期的にも安定して事業を進められます。
サブスク型ビジネスを展開するメリット
サブスク型ビジネスを展開するメリットは、以下のとおりです。
- 収益が安定する
- サービスのアップデートがしやすい
- 顧客を獲得しやすい
それぞれ解説します。
収益が安定する
サブスク型ビジネスモデルを採用することで、企業は収益の安定性を向上させられます。サブスクでは顧客が定期的に料金を支払うため、毎月の収入を予測しやすくなるためです。
収益が安定すれば、市場が落ち込んでいる場合であっても経営状況を維持できます。そのため、新しい事業を始める際や新商品・サービスを開発する際のリスクも少なくなり、より安全な財務戦略を立てられます。
さらに、収益が安定すれば、顧客に対して高品質のサービスを継続的に提供できるでしょう。これにより、顧客のロイヤルティが高まります。
サービスのアップデートがしやすい
サブスク型ビジネスモデルは、サービスのアップデートがしやすい点がメリットです。買い切り型のサービスであれば、顧客は買った時点でのサービスしか利用できません。しかし、サブスクであれば、顧客の利用状況やフィードバックを参考にしつつ、定期的にサービスをアップデート可能です。
定期的にアップデートを行うことで、顧客のニーズに答えることが可能となり、顧客満足度が向上します。また、定期的に顧客のデータを見直すことで、市場の動きやトレンドに敏感に対応できる体制が整います。
顧客を獲得しやすい
顧客を獲得しやすい点も、サブスク型ビジネスモデルを展開するメリットです。サブスクの特徴は、顧客がコストを抑えつつサービスを利用できる点です。コストが低いため、その分顧客にとっては利用するハードルが低くなるでしょう。
また、無料トライアル期間や特別割引などを設けると、新規顧客に対してサービスを認知してもらえるチャンスが増え、結果的に利用へとつながるケースが多くみられます。
サブスクは、顧客がサービスを継続的に利用することを前提としているため、一度契約を結ぶと、顧客は長期にわたってサービスを利用し続けやすくなります。そのため、一時的な購入よりも長期的な関係を構築しやすく、継続的な収益源となるでしょう。満足度が高い高品質なサービスを提供できれば、口コミや紹介によってさらなる新規顧客を獲得する効果も期待できます。
サブスク型ビジネスを展開するデメリット
サブスク型ビジネスを展開するデメリットは、以下のとおりです。
- 収益化に時間がかかる
- 解約を防ぐための施策を打たなければならない
- 競合が多い
それぞれ解説します。
収益化に時間がかかる
サブスク型ビジネスを展開するデメリットは、収益化に時間がかかる点です。
サブスクは、顧客から一度に大きな収入を得るのではなく、定期的に小さな額を得る形式です。そのため、顧客の数を十分に獲得できるまで、収益化に時間がかかります。特に新しくサブスクに関する事業を始めた場合や、市場での優位性が低い場合は、さらに収益化に時間がかかるでしょう。
収益化が遅れると、企業のキャッシュフローに影響が出てきます。また、事業の拡張や他の戦略についても影響が出てくることも。サブスク型のビジネスを展開する際は、収益化までに時間がかかる点も踏まえて戦略を立てることを意識してください。
解約を防ぐための施策を打たなければならない
サブスク型ビジネスでは、顧客の解約率を低く抑えることが成功につながる取り組みです。
サービスに価値がないと判断すれば、顧客はサブスクの解約を検討します。継続して契約をしてもらうためには、サービスの質を維持しつつ、さらなるクオリティアップに努めなければなりません。
製品の改善やカスタマーサポートの強化、顧客エンゲージメント向上への取り組みなど、様々なアプローチを通して、解約を防ぐための措置を取り続けることが求められます。
競合が多い
サブスク型ビジネスは、近年多くの企業によって取り入れられている手法です。そのため、競合他社も多くなっており、激しい競争環境に置かれる恐れがあります。
サブスク型ビジネスで成功するためには、単にクオリティが高い商品やサービスを提供するだけでなく、顧客にとって明確な差別化ポイントを持つことが重要です。差別化の方法としては、商品・サービスの独自性強化、価格設定、顧客への付加価値アップ、ポイント制の導入などが挙げられます。
さらに、競争が激しい市場では、顧客体験を最大化する施策も有効です。顧客が満足する商品・サービスを提供することで、顧客のロイヤルティを向上させ、解約率を低減できます。
サブスク型ビジネスの事業計画を立てる際のポイント
サブスク型ビジネスの事業計画を立てる際のポイントは、以下のとおりです。
- 顧客データを分析する
- キャンペーンを実施する
- プランを複数用意する
- カスタマーサクセスに力を入れる
それぞれ解説します。
顧客データを分析する
サブスク型ビジネスの事業計画を立てる際には、顧客データの分析に注力してください。顧客データを分析することで、顧客の行動パターンや嗜好、ニーズを把握し、その内容に基づいて製品やサービスを最適化できるようになります。具体的には、購入履歴や利用頻度、解約率などのデータを収集するとよいでしょう。
たとえば、分析に寄って特定の機能が頻繁に使用されていることが分かれば、その機能を強化し、さらなるアピールにつなげられます。一方、あまり利用されていない機能についても、改善をする、機能をなくすなど状況に応じた判断が可能です。
データ分析は、顧客がサービスを解約しようとしている兆候を見つけるためにも役立ちます。顧客データを分析する取り組みは、市場での優位性を得るために欠かせません。
キャンペーンを実施する
サブスク型ビジネスの事業計画を立てる際には、定期的なキャンペーンの実施も有効な戦略です。キャンペーンを計画的に実施すれば、顧客の利用を促進できるため、顧客基盤をより強固なものにできます。
キャンペーンを実施する際には、明確な目標を設定してください。そのうえで、ターゲットとする顧客を設定し、ターゲットに響く戦略を策定する必要があります。たとえば、若い年代にアプローチする場合には、SNSを活用したマーケティングが効果的でしょう。
実施するキャンペーンの種類は多岐にわたりますが、無料トライアルや割引、季節に合わせたイベントなどが一般的です。キャンペーンを通して、商品やサービスを体験し、サブスクへの登録を促せるような機会を顧客に提供しましょう。
プランを複数用意する
プランを複数用意することは、サブスク型ビジネスの事業計画を立てる際に重要な施策です。顧客の異なるニーズや予算に応じた複数のプランを提供すれば、さまざまな潜在顧客に対してのアプローチが可能です。
プランを決める際には、まず基本プランを用意します。基本プランは、最も低価格で、基本的な機能やサービスを提供するものです。サービスを始めて利用する顧客や、コストを最小限に抑えたい顧客に向いています。そのうえで、より高度な機能を利用できるミドルプランやプレミアムプランを用意しましょう。これにより、さまざまな価値を求める顧客のニーズに応えられるようになるでしょう。
プランを複数用意すれば、顧客は自分に最適なサービスを見つけやすくなり、顧客満足度の向上につながります。
カスタマーサクセスに力を入れる
サブスク型ビジネスの事業計画を立てる際には、カスタマーサクセスに力を入れた戦略を考えましょう。これにより、顧客満足度の向上や解約率の低下を図れます。
カスタマーサクセスに関する 大事な点は、顧客がサブスクの活用を通した経験を支援することです。専門のチームを編成する際には、顧客のニーズに合わせたサポートを提供するよう教育する必要があります。
カスタマーサクセスに力を入れることは、顧客がサービスを最大限に活用し続け、ファンとなるうえで重要な戦略です。ひいては、市場での優位性を高めるための基盤となるでしょう。
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