EC市場とはそもそも何?
ECとは電子商取引のことで、インターネットなどを介してモノやサービスを売買するビジネスを意味します。EC市場とは、このECの取引を行う市場全体のことを指す言葉です。
パソコンやスマートフォンが一般化した現代では、ECを利用した商品購入やサービスの利用が当たり前の世の中になってきました。実際に店舗を構える必要はなく、気軽にネットショップを運営するビジネスモデルも定番化しています。
そこで今回は、成長著しいEC市場について、概要や市場規模、今後の動向などを解説します。
EC市場とは?
そもそもEC(electronic commerce)とは、日本語で電子商取引と訳される「インターネット上でモノやサービスを売買する」ビジネスを指します。EC市場とは、このECの取引を行う市場全体のことを指す言葉です。
また、経済産業省が毎年発表している「電子商取引に関する市場調査(令和元年)」ではECに関して、
「インターネットを利用して、受発注がコンピュータネットワークシステム上で行われること」
定義しています。
国内ECの市場規模は?
では、国内のECの市場規模について見ていきましょう。
経済産業省の同調査によると、国内のBtoC‐ECの市場規模は、2019年が19兆3,609億円。これは前年比で7.65%の増加で、2020年には20兆円を超えると予想されています。過去10年のデータを見ても、右肩上がりで推移していることが分かり、国内のEC市場の成長が伺えます。
また、すべての商取引の内でECが占める割合をあらわすEC化率は2019年が6.76%。これも前年比では0.54ポイントの上昇で、過去10年すべての年で前年比を上回る成長率です。
次に国内のBtoB‐ECの市場規模を見てみると、2019年が352兆9,620 億円で前年比2.5%の増加。EC化率はBtoCと比べると非常に高く、31.7%となっています。市場規模・EC化率ともに右肩上がりで、こちらも顕著な成長が見て取れます。
国内EC市場と海外EC市場との比較
さて、日本国内のEC市場のデータを見ていきましたが、海外市場との比較ではどのような傾向が見て取れるのでしょうか。中国とアメリカのデータを例に見ていきましょう(いずれも既出の経済産業省データより)。
【中国】
中国のBtoC-ECの市場規模は2019年時点で 1.93 兆USドル。これは日本円で約214兆円(1ドル=110円で計算)と、日本の市場規模の10倍以上の金額となっています。また、EC化率は36.6%と非常に高く、中国経済の好調を如実にあらわしたデータです。
今後中国のEC市場はさらなる成長を続け、4.10兆USドル=日本円で約454兆円へ膨らむと試算されています。EC化率も60%を超えるとされ、EC市場での中国の存在感はさらに大きくなりそうです。
【アメリカ】
2019年のアメリカのEC市場規模は、日本円で63兆5,000億円となっています。EC化率は11.0%と2桁を記録し、日本より高い水準となっています。
試算では2022年に85.9兆円、EC化率は15.5%とさらなる成長が予想されます。
中国・アメリカの市場規模はいずれも日本国内より大きく、とくにEC化率の違いは顕著な部分です。EC化率が低い理由として、
事業者のサイト環境が整っていない
国内での電子決済の普及が遅い
といったシステム・サービス環境の影響が考えられます。一方で新型コロナウイルスの感染拡大を受け、国内でもデジタル化が推進される動きが加速してます。今後一気に環境の整備が進めば、国内のEC市場はさらに大きな成長が期待できるでしょう。
EC市場で取引されている商品
EC市場で売買されている商品の分野には購入頻度に一定の傾向がみられます。
比較的大きな買い物になるもの、定期的に使用したいものはネットショップで購入する人が多くなります。また、ECでしか購入できないサービスへの需要も高くなっています。
EC市場で主に取引されている商品分野
比較的大きな買い物となる商品をECで購入するケースは多くあります。テレビやパソコン、洗濯機などの電化製品はそのうちの一つです。実店舗では自分に合った商品がない場合もありますが、ネットショップは品揃え豊富で、求めている商品を探しやすいメリットがあります。大型の電化製品だと購入後の持ち運びに大きな労力がかかりますが、ネットショップでの注文では基本的に自宅まで届けてくれる点も魅力的です。
また、定期的に使用したい商品もEC市場で多く売買されています。化粧品や健康食品はその代表例です。いちいちお店に足を運んで購入する必要もなくなり、ECサイトで定期購入する方が安価に手に入れられる点もメリットです。
その他には、音楽データのダウンロードなど、実店舗では購入することができないサービスはECサイトから商品を購入する一つの動機にもなっています。
EC市場であまり取引されていない商品分野
一方で、EC市場であまり売買されていない商品もあります。
生鮮食品などの腐りやすくすぐに手に入れたいものは、実店舗での購入が優勢です。しかし、最近では食品の分野もEC市場のシェアを広げつつあり、今後の動向に注目が集まります。
また、実際に手にとって確認したい商品、例えば服や靴などはサイズやフィット感を確かめたいというニーズが高い商品です。こうした商材は実店舗とECの併用が向いており、最初は店舗で購入しながら自分のサイズを把握してもらい、以降はECで購入するといった流れがスムーズです。
今後のEC市場の動向や展望
最後に、今後のEC市場の動向や展望について考察していきます。
コロナ禍を受けて日本国内では次々とEC店舗が新規出店しています。すでに激しかった業界の争いは、さらに熾烈を極めています。しかしながらコロナ禍のバブル的なEC消費も落ち着きを見せ始めており、今後はユーザーの目がより一層厳しくなると予想されます。サービスや商品の質だけでなく、継続して利用する価値があるかを見定める流れが生まれるでしょう。
単純に商品をECで売るというだけに留まらず、コロナ禍で増えたユーザーをどうリピーターに育成するのか、商品やサービスだけでなくいかにして付加価値を提供することができるのかが、生き残りの分かれ目となりそうです。
ライブコマースやD2Cがトレンドに
ビジネスモデルのトレンドとして注目したいのが、ライブコマースとD2Cです。実際に店舗を訪れたような体験をベースに商品を購入できるライブコマースは、中国を中心に爆発的な人気を集めています。日本国内でも導入する企業が増えており、今後ECのトレンドの1つになることが予想されます。
また、D2Cは国内でもすっかり定番のビジネスモデルになりました。自社で製造から販売までを一貫して行う事業形態だけでなく、商品やサービスのビジョンやコンセプトといった「世界観」を重視する手法は、「コト」ベースの消費者ニーズともマッチしています。アメリカではD2Cのユニコーン企業が続々と登場するなど市場への期待値も高いだけに、国内でもまだまだ活況が期待できそうです。
まとめ
ECとは電子商取引のことで、インターネットなどを介してモノやサービスを売買するビジネスです。EC市場とは、このECの取引を行う市場全体のことを指すます。
日本国内での市場規模は年々右肩上がりで推移していますが、中国やアメリカといったEC大国にはやや遅れをとっているのが現状です。見方を変えれば、まだまだ国内でも市場を開拓する余地が残されているということ。
今後は商品の質やサービスだけでなく、ユーザーにいかに付加価値を提供できるかがECで成功を収める大きなポイントとなりそうです。